- 読書の目的は「自己成長」であり、そのためには、内容を記憶し、知識として定着させる必要がある。
- 「何度もアウトプットされる情報」と「心が動いた出来事」は記憶されやすい。
- 15分程度のスキマ時間を繰り返し活用することで、記憶力の高い状態での読書時間を確保できる。
- 「議論できる水準」になるまで理解するように「深く読む」ことが、読書の必要条件である。
- 「好きな著者」に会い、その人となりを知ることで、本の内容をより深く理解できるようになる。
読書の価値を見直す

本が持つ特別な力:「知識の結晶」
インターネット、テレビ、新聞などから得られるのは、主に「情報」です。これらは日々の出来事や事実を伝えてくれますが、時間とともに古くなっていきます。
一方、書籍から得られるのは「知識」です。著者が膨大な情報を分析し、整理し、体系的にまとめあげた「エッセンス」が詰まっています。情報が1年で色褪せるのに対し、知識は10年経っても価値を失いません。本とは、実生活で活用でき、応用が効く「結晶化された知恵」を手に入れる手段なのです。
読書がもたらす具体的なメリット
読書を通じて、先人たちが試行錯誤の末に獲得した知恵を借りることができます。これにより、無駄な回り道を避け、一人では越えられない壁も乗り越えられるようになります。
読書は、仕事のスキルを向上させ、人生の可能性を広げ、悩みや不安を軽減してくれます。さらに、文章表現力の向上や、脳機能の強化にも効果があります。脳科学の研究でも、読書が脳を活性化させ、パフォーマンスを高めること、文字情報に触れることで不安が和らぐことが実証されています。
読書の本質:成長を目指すが、楽しむことが鍵
理想的な読書とは、考え方だけでなく実際の行動を変え、現実を少しでも良い方向へ導くものです。1週間前に読んだ本の内容を人に説明できないようでは、真の自己成長にはつながりません。「読書脳」を育て、成長を加速させ、人生を変えていくことが重要です。
しかし、ここに大切なポイントがあります。読書の動機は「楽しいから」であるべきで、「成長のため」であってはいけません。成長を目的にすると、すぐに結果が出ないことでストレスを感じ、記憶を強化するドーパミンの分泌が妨げられてしまいます。
純粋に楽しみながら読書をすることで、自然とドーパミンが分泌され、記憶に定着し、結果的に自己成長へとつながっていくのです。
本書の要点 自分を知る パーソナル・プロジェクトから導かれる行動 あなたがレストランにいると、隣のテーブルには男性二人組が座っています。そのうちの一人が運ばれてきたステーキについて「焼き加減が良くない[…]
精神科医が実践する効果的な読書法:3つの核心原則

原則1:記憶に刻み込む読書テクニック
人間の脳は、「繰り返し使われる情報」と「感情が揺さぶられた体験」を忘れにくい特性があります。脳科学の知見によれば、最も効果的な記憶定着法は「最初に情報を得てから7〜10日以内に3〜4回アウトプットする」ことです。
私が実践している4つのアウトプット方法のうち、1週間以内に3つを実行するだけで、記憶への定着率が劇的に向上します。
- 読みながらメモを取る、重要箇所にマーカーを引く
- 本の内容を誰かに語る、おすすめする
- 印象的な気づきや名言をSNSで共有する
- 書評やレビューをブログやメルマガで発信する
感情が動いた出来事が強く記憶されるのは、喜怒哀楽に連動して記憶強化物質が脳内で大量放出されるためです。例えば、不安や恐怖を感じるとアドレナリン・ノルアドレナリンが、ワクワクするとドーパミンが、至福の瞬間にはエンドルフィンが、愛情を感じるとオキシトシンが分泌されます。これらの物質は科学的に記憶力向上効果が証明されており、意識的に感情を動かしながら読むことで、内容を鮮明かつ長期的に記憶できるのです。
原則2:隙間時間を活用した読書習慣
多くの会社員には、通勤、移動、待ち合わせの待機時間など、1日約2時間、月間で60時間ほどの隙間時間が存在します。この時間を読書に充てれば、読むスピードが遅い人でも月10冊は十分達成可能です。
私自身、電車を待つわずかな時間も、レストランで料理が運ばれてくるまでの数分も、本を開いて読んでいます。座れる環境ではパソコンで作業し、立っている時はほぼ読書に時間を使っています。
さらに効果的なのが、「今日中にこの本を読み切る!」と制限時間を設定することです。締め切り効果により緊張感が生まれ、集中力が高まります。すると、ドーパミンやノルアドレナリンといった記憶関連物質が分泌され、読んだ内容がより強く記憶に残るようになります。
原則3:「深読(しんどく)」のすすめ
本から真の学びと気づきを得て、「議論できるレベル」まで内容を深く理解する読み方を、私は「深読(しんどく)」と呼んでいます。友人との会話で、ある本について10〜20分語り合い、盛り上がれるなら「議論できるレベル」に達していると言えるでしょう。
もし感想や意見を述べられないなら、それは「アウトプットできていない」「自分の行動に影響を与えていない」ことを意味し、本を読んだ価値がありません。つまり、「深読」は有意義な読書の前提条件なのです。
まずは「深読」を身につけてから、「速読」や「多読」を目指すべきです。浅い理解のまま数だけこなしても、人生は変わりません。
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まずは全体像をつかむ
本を読み始める前に、「パラパラ読み」で全体の地図を頭に入れましょう。目的地と経路を確認するように、その本から何を得たいのかを明確にし、「速読」か「精読」かを判断します。この準備により、読書速度が上がり、学習効果も格段に高まります。
「この本から何を学びたいか」がはっきりしている場合は、目次から該当箇所を探し、結論が書かれていそうな部分に直接飛ぶ読み方が効果的です。そのページを読んで「もっと知りたい」「深く理解したい」「疑問が湧いた」と感じたら、再び目次で関連箇所を見つけて移動します。
ここまでわずか5分程度です。読書開始直後の5分間は記憶に残りやすい黄金時間なので、本の核心部分を最初に読むことで忘れにくくなります。さらに、知的好奇心が刺激されることでドーパミンが分泌され、記憶の定着率が高まるのです。
「ギリギリ感」と「ワクワク感」を最大活用する
人間の脳は、自分の能力より少しだけ難しい課題に挑戦しているときに最も活性化します。読書では、「内容の難易度」と「読むスピード」の2つで調整が可能です。ビジネス書や実用書を読む際は、適度な時間制限を設けて「ギリギリ達成できそう」な難易度に設定することで、記憶力と学習効果を最大化できます。
ドーパミンは「目標を立てる」だけでも分泌されますが、「適切な難易度」に設定することで、さらに大量に分泌されます。
また、こんな経験はありませんか?書店でワクワクして本を購入したのに、1週間後に読もうとしたらその高揚感が消えている…。これは興味や関心が薄れ、ドーパミンが分泌されなくなった状態です。「面白そう!」と思って購入したなら、その場で、あるいは帰宅後すぐに読み始めるべきです。
著者本人から直接学ぶ
「この著者が好きだ」と思えたなら、セミナーや講演会に足を運び、直接会うことを強くお勧めします。対面することで、文字では伝わらない理解が生まれ、心と心の交流が可能になります。本の内容を何倍も深く理解できるだけでなく、著者の人柄や雰囲気を肌で感じることができ、さらにその著者を好きになるはずです。
読書はインプットの入口であり、その著者から学ぶ旅の始まりに過ぎません。好きな本をたくさん読み、講演会で著者に会ううちに、「こんな人になりたい」という敬意が芽生えてきます。すると「好きな著者」が「メンター(人生の師)」へと変わっていきます。
メンターに何度も会うことで、実際に自分もその人に近づいていく—これは心理学でいう「モデリング」効果です。尊敬する人の本を読むだけでもモデリングは起こりますが、実際に会うことで、その効果は何十倍にも増幅されるのです。
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まとめ
本書は全8章から成り、この要約では前半4章を中心に、なぜ読書が重要なのか、効果的な読書法、そして読書時間の作り方について解説しました。
後半部分では、良書の見極め方や購入のコツ、電子書籍の活用術など、より効率的かつ効果的に読書を続けるための実践的なノウハウが豊富に紹介されています。
自分の読書習慣を見つめ直し、より充実した読書生活を送るきっかけを与えてくれる一冊です。ぜひ実際に手に取って、読んでみてください。
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