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自分の価値を最大にするハーバードの心理学講義/ブライアン・R・リトル

本書の要点

自分を知る

パーソナル・プロジェクトから導かれる行動

あなたがレストランにいると、隣のテーブルには男性二人組が座っています。そのうちの一人が運ばれてきたステーキについて「焼き加減が良くない」と言い、ウェイターに料理を戻します。このやり取りが三回続いた場合、その男性にどんな印象を持つでしょうか?

人の行動は、遺伝的、社会的、そして個人的な動機によって影響を受けます。

遺伝的動機は、生まれ持った気質に基づいています。個人のパーソナリティの特徴を理解するために、「誠実性」「協調性」「情緒安定性」「開放性」「外向性」の五つの因子を用いる「ビッグファイブモデル」があります。これは現代のパーソナリティ研究において最も影響力のあるモデルの一つです。例えば、オキシトシンというホルモンの分泌量が高い人は協調性が高い傾向があり、こうしたパーソナリティは生物学的要因や遺伝的な影響を強く受けることがあります。

社会的動機は、社会や文化的な規範に基づきます。そして、個人的動機はその人自身の目標や目的から生まれます。個人的動機は他者からは解釈しづらいことが多く、遺伝的動機や社会的動機とは異なります。

個人の計画や目標は「パーソナル・プロジェクト」と呼ばれ、犬の散歩のような些細なものから人生の大きな夢に至るまで様々です。これらに取り組むことで、普段とは異なる行動を取ることがあります。例えば、ステーキを突き返した男性は、「肉の焼き加減にこだわる」というよりも、同席した上司に良い印象を与えようとするパーソナル・プロジェクトがあったため、普段のパーソナリティから逸脱した行動を取ったのかもしれません。こうした行動を引き起こすのは、「自由特性」と著者が呼ぶ、変化することができるパーソナリティの一面です。

違う自分を演じるストレス

「自由特性」に基づいて本来の自分とは異なる振る舞いをすることは、自分を偽ることにはなりません。遺伝的、社会的、そして個人的な動機に従って行動することは、自然なことです。しかしながら、長い期間にわたり本来の自分と違う役を演じ続けることは、心身に大きな負担をかけることになります。

著者の心理学のクラスを受講していたピーターという学生の事例を紹介しましょう。彼のパーソナリティテストの結果には、外向的な性格が強く表れていましたが、実際には人里離れた修道院で修道士として静かな生活をしていました。しかし、その環境は彼にとって次第にストレスとなり、最終的に修道士としての生活に疲れ果て、大学へ進学し学者の道を歩み始めました。教育学の教授として成功を収めた彼は、自分の本来の特性を活かすことができました。このように、遺伝的な気質と社会的な環境が調和していると、より良い結果が生まれることがわかります。

また、ダン・ウェグナーによる有名な研究では、「白クマを考えないようにすると、逆に白クマのことが頭から離れなくなる」という現象が紹介されています。これは、思考を抑えようとすることで「皮肉なプロセス」が起こり、かえってその思考が強まるというものです。このことは「自由特性」にも当てはまります。つまり、本来の自分を無理に抑え込むと、逆にその本来の自分が漏れ出てしまうことがあるのです。

本来の自分に戻れる「回復のための場所」

異なる自分を演じることからくるストレスを軽減するには、どのようにすればよいのでしょうか?

また、仕事で普段と異なる行動を強いられる場面では、パフォーマンスを保つために何が必要なのでしょうか。これらの問題を解決するためには、自分らしく過ごせる「回復のための場所」を見つけることが重要です。

著者はカナダのオンタリオ州にあるカナダ王立軍事大学を定期的に訪れ、将校たちにパーソナリティ心理学の講義を行っています。著者自身は内向的な性格ですが、講義では早口で活気に満ち、対話を交えながら話すことで聴講者の興味を引きます。これは、外向的な振る舞いを意識的に取り入れることで、より効果的に講義を進めるためです。講義は長時間に及ぶことが多いため、昼食の時間を使って、講義後の緊張をほぐす必要がありました。時には将校たちと賑やかな昼食会に参加することもありましたが、その場合、うまくリフレッシュできず、午後の講義の質が低下してしまうことがわかりました。そこで、昼食の時間を利用して一人でキャンパス近くの川沿いを散歩することにしたところ、その時間を作ることで心を落ち着け、覚醒レベルを下げることができました。

自分の生まれ持った性格に従った行動で力を発揮することもあれば、プロフェッショナルとして普段と異なる行動をとり、職業上の責任を果たすこともあります。しかし、普段のキャラクターから外れて行動する場合には、本来の自分に戻れる「回復のための場所」で自分を解放する時間が必要なのです。

主体的に人生を捉えることは幸せか

「コントロール感」によるストレスの低減

パーソナリティ心理学では、私たちの行動や人生に影響を与える要因として「信念」も研究の対象となっています。「人生をコントロールできるかどうか」というテーマに関する信念に基づいて、人は大きく2つのタイプに分けられます。一つは、人生のコントロールを自分の手に委ねる「自己解決型」、もう一つは、他者や環境など外部の力によって自分の人生が決まると考える「他者依存型」です。多くの研究結果において、自己解決型の人々は幸福度や成功においてプラスの影響を受けやすいことが示されています。

ここで、ロックフェラー大学が行った騒音ストレスの実験を紹介します。被験者は不定期に爆音が流れるヘッドフォンをつけて事務作業を行い、その後、別室に移動して他の被験者と合流します。合流した被験者の中には、爆音のタイミングを知らされずに作業した人と、爆音のタイミングを事前に知って作業した人が混ざっていました。

この実験の目的は、「人間が騒音のストレスに適応できるか」を調べることでしたが、実験の結果には興味深い発見がありました。爆音のタイミングを事前に知っていた被験者は、知らされていなかった被験者よりも早くその環境に適応しました。さらに、グループの一部に爆音を止めることができるボタンを設置したところ、そのボタンはほとんど使われなかったものの、ボタンがないグループと比較して、明らかにストレスが少なかったことがわかりました。つまり、爆音のタイミングを知っていることや、爆音を停止できるという「コントロール感」が、ストレスの軽減に寄与したのです。

物事をコントロールしているという感覚は、自己解決型の行動パターンとも関連しています。自己解決型の人は、ストレスを管理するための「ボタン」をいくつか持っていると考えられます。したがって、自己解決型の人々は、日常生活のストレスにうまく対処できるため、幸福度が高い傾向があると考えられるのです。

「コントロール感」の喪失によるショック

では、自己解決型の人は、常に他者依存型の人よりも幸福度が高いのでしょうか。リチャード・シュルンツらが介護施設の入居者を対象に行った実験を通じて考えてみましょう。

この実験では、デューク大学の学生が定期的に介護施設を訪れ、被験者に接することになりました。訪問日時を自分で決めることができるグループと、訪問日時を決められないグループに分けられました。ただし、学生が施設に滞在する「時間」や、交流の「内容」はどちらのグループも同じです。結果として、訪問日時をコントロールできたグループの入居者は、コントロールできなかったグループに比べて、主観的な幸福度や健康状態が高いことがわかりました。この結果は予想通りでした。

しかし、その後のフォローアップ調査で予期しない結果が明らかになりました。学生が卒業するタイミングで施設訪問が突然終了し、その影響が顕著に現れました。訪問日時をコントロールできていた入居者は、できなかった入居者に比べて、健康や幸福感に大きな減少が見られ、死亡率も高くなったのです。

この実験からわかるのは、何かをコントロールしているという感覚が急に失われた場合、それが大きなショックとなり得るということです。運命を自分の力で変えられると信じることには限界があり、その考え方は時として幻想に過ぎないことも理解する必要があるという教訓を得られます。

人生に意義をもたらすコア・プロジェクト

停滞したコア・プロジェクトのリフレーミング

ここからは、前述のパーソナル・プロジェクトについてもう少し掘り下げてみましょう。パーソナル・プロジェクトの中には、コア・プロジェクトと呼ばれる、人生そのものと言えるほど大きな意味を持つプロジェクトがあります。コア・プロジェクトは「重要性」や「自分の価値観との一致」、さらには「自己表現できる」などの感覚が伴う場合、そのプロジェクトがコア・プロジェクトであるといえるでしょう。

コア・プロジェクトは他のさまざまなプロジェクトとも関連しているため、途中で放棄されることが少ないです。そのため、成功の見込みが低い場合でも、取り組みを辞めることができないケースもあります。しかし、停滞しているプロジェクトを無理に進めることは、生活の質を低下させてしまう可能性があります。では、停滞したコア・プロジェクトをどのように再活性化させることができるのでしょうか。

ここで、プロジェクトの捉え方を変えることで進行を促した事例として、ボストンのホテルの清掃員を対象にした研究があります。毎日15部屋を清掃するという非常に労力を要する仕事をしているにも関わらず、多くの清掃員は運動不足だと感じていました。ハーバード大学のアリア・クラムとエレン・ランガーは、清掃員が自分の仕事をエクササイズと認識することで、プラセボ効果が生じ、生理学的な指標に変化が現れるという仮説を立てて実験を行いました。

実験では、清掃員を2つのグループに分けました。一方のグループには「部屋の掃除は健康的な運動であり、政府が推奨する活動的なライフスタイルの基準を満たす」と伝えました。もう一方のグループには何も伝えませんでした。4週間後、2つのグループの体重、血圧、体脂肪などの数値に違いが現れました。「掃除を運動だ」と認識したグループでは、体重、血圧、体脂肪が減少したことが確認されました。つまり、部屋の清掃を健康的な運動だと捉え直すことで、実際に健康的な効果が得られたことがわかったのです。

不得意分野への挑戦

パーソナリティ特性とパーソナル・プロジェクトが「フィット」すると、そのプロジェクトはより追求しやすくなります。たとえば、「誠実性」が高い人は、学問や社交といった分野のパーソナル・プロジェクトに、より効果的に取り組む傾向があります。また、取り組むプロジェクトが得意分野であると自覚しているときには、最も高い幸福感を得ることができます。このように、自分の固定的な特性に合ったプロジェクトを遂行することは、プロジェクトへの持続的な取り組みを促し、成功を引き寄せるための重要な要素となるのです。

しかし、人生を理解するためには、パーソナリティ特性の変化できる側面、すなわち「自由特性」を理解することが重要だと著者は繰り返し述べています。「自由特性」を通して異なる自分を演じることは、コア・プロジェクトの成功やその持続性にプラスの影響を与えることがあります。最近の研究では、内向的な人が外向的に振る舞うことで、ポジティブな気分や幸福感が増すことも明らかになっています。この「自由特性」によって、私たちは自分の可能性を広げ、さらには成長することができるのです。長期間にわたって異なる自分を演じることによるストレスは、「回復のための場所」を用意することなく、根本的な方法で解消することも可能です。それは、つまり自分の特性そのものを変えるという自己変革に挑戦することです。

まとめ

わたしたちは独自の判断基準に基づき、物事を予測したり、自分や他人を解釈したりしている。こうした評価基準は、周囲を理解する便利な指標でもあるが、自身を拘束する足枷にもなりうるということを、本書から学ぶことができるだろう。

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