第1類に共通する特性の重要ポイント
共通する性状
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大部分は無色の結晶か 白色の粉末である。
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不燃性である(⇒無機化合物である)。 (*一部例外あり)
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酸素を含有しているので、加熱, 衝撃および摩擦等により分解して酸素 を発生し(酸化剤になる), 周囲の可燃物の燃焼を促進させる。
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アルカリ金属の過酸化物 (またはこれを含有するもの)は水と反応すると発熱し酸素を発生する。
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比重は1より大きい。
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ほとんどのものは、水に溶ける。
貯蔵および取扱い上の注意
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加熱 (または火気) 衝撃および摩擦などを避ける。
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酸化されやすい物質および強酸との接触を避ける。
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アルカリ金属の過酸化物(またはこれを含有するもの)は、水との接触 を避ける。
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密栓して冷所に貯蔵する。
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潮解しやすいものは, 湿気に注意する。
共通する消火の方法
大量の水で冷却して分解温度以下にする(分解による酸素の供給を停止)。 ただし,アルカリ金属の過酸化物等は禁水なので、初期の段階で炭酸水素塩類 の粉末消火器や乾燥砂などを用い, 中期以降は,大量の水を可燃物の方に注水 し、延焼を防ぐ。 なお、 二酸化炭素消火剤, ハロゲン化物消火剤は適応しない。
第3類に共通する特性のまとめ
共通する性状 | ・比重は1より大きい。 ・不燃性で無色の結晶 (または白色の粉末)。 ・加熱, 衝撃等により酸素を発生し、 可燃物の燃焼を促進する。 ・アルカリ金属の過酸化物は水と発熱反応し酸素を発生する。 |
貯蔵、取扱い方法 | ・火気,衝撃,可燃物(有機物), 強酸との接触をさける。 ・アルカリ金属の過酸化物は水との接触を避ける。 |
消化方法 | 【原則】 水系 (水, 強化液, 泡 ) 粉末 (リン酸塩類) 乾燥砂等 (膨張ひる石, 膨張真珠岩含む) 【アルカリ金属の過酸化物等】 (アルカリ土類金属含む) 粉末 (炭酸水素塩類) 乾燥砂等 (注水は厳禁!) 【適応しない消火剤】 二酸化炭素消火剤 ハロゲン化物消火剤 |
第1類危険物に属する各物質の 重要ポイント
塩素酸塩類
(塩素酸 (HCIO) のHを金属などで置換した化合物)
物質名 | 形状 | 比重 | 潮解性 | 溶ける | 溶けない |
塩素酸K | 無白・結晶 | 2.33 | 熱水 | ||
塩素酸Na | 無・結晶 | 2.5 | ○ | 水 アルコール | |
塩素酸アンモニウム | 無・結晶 | 2.42 | 水 アルコール少 | ||
塩素酸Ba | 無・結晶 | 水 | アルコール | ||
塩素酸Ca | 白・粒 | 水 |
【塩素酸塩類に共通する性状】
・可燃物はもちろん、少量の強酸や硫黄, 赤リンなどと混合した場合や、単独でも,衝撃, 摩擦または加熱によって爆発する危険性がある。
【塩素酸塩類に共通する貯蔵, 取扱い法】
⇒第1類に共通する貯蔵, 取扱い法
【塩素酸塩類に共通する消火法】
初期消火には,水系の消火器 (泡消火器, 強化液消火器)や粉末消火器(リ ン酸塩類を使用するもの)も有効である。
① 塩素酸カリウム
1) 少量の濃硝酸などの強酸 (強塩基ではない!) の添加によって爆発する。
2) 酸性溶液中では, 強い酸化作用を有する。
3) アンモニア(または塩化アンモニウム) との反応生成物は自然爆発す ることがある。
4) アルコールには溶けない。
② 塩素酸ナトリウム
アルコールに溶ける。
③ 塩素酸アンモニウム
1) 高温で爆発するおそれがある。
2) アルコールには溶けにくい。
過塩素酸塩類
(過塩素酸(HCIO)のHを金属などで置換した化合 物) 第6類の過塩素酸と間違わないように!
物質名 | 形状 | 比重 | 潮解性 | 溶ける | 溶けない |
過塩素酸K | 無・結晶 | 2.52 | 水(難溶) アルコール エタノール | ||
過塩素酸Na | 無・結晶 | 2.03 | ○ | 水 アルコール | |
過塩素酸アンモニウム | 無・結晶 | 1.95 | 水 アルコール少 |
【過塩素酸塩類に共通する性状などは塩素酸塩類に同じ】
① 過塩素酸カリウム
塩素酸カリウムと同じ。
② 過塩素酸ナトリウム
塩素酸ナトリウムと同じ。
③ 過塩素酸アンモニウム
燃焼時に有毒ガスを発生する。
無機過酸化物
過酸化物イオンOに金属原子が結合した無機化合物
物質名 | 形状 | 比重 | 潮解性 | 溶ける | 溶けない |
過酸化K | 橙・粉 | 2.0 | ○ | 水 | |
過酸化Na | 黄白・粉 | 2.8 | 水 酸 | アルコール アルカリ | |
過酸化Ca | 無・粉 | 酸 | 水(難溶) アルコール エタノール エーテル | ||
過酸化Ba | 灰白・粉 | 水 | |||
過酸化Mg | 白・粉 | 酸 アンモニウム塩溶液 | エタノール | ||
過酸化Li 過酸化ルビジウム 過酸化セシウム 過酸化ストロンチウム |
【無機過酸化物に共通する性状】
・アルカリ金属の無機過酸化物は水と作用して発熱し、分解して酸素を発生する。
・アルカリ土類金属の無機過酸化物は、加熱により分解して酸素を発生する。
【無機過酸化物に共通する貯蔵, 取扱い法】
・水との接触を避けて貯蔵する。
【無機過酸化物に共通する消火法】
・アルカリ金属, アルカリ土類金属に注水は厳禁。
・初期の段階で 炭酸水素塩類の粉末消火器や乾燥砂などを用い、中期以 降は大量の水を危険物ではなく, 隣接する可燃物の方に注水し、延焼を防 ぐ。
① 過酸化カリウム
1) オレンジ色の粉末
2) 水と反応して発熱し、酸素と水酸化カリウムを発生する。
3) 吸湿性が強く、 潮解性がある。
② 過酸化ナトリウム
1) 黄白色の粉末
2) 吸湿性が強い。
③ 過酸化カルシウム
エタノール、エーテルには溶けないが、酸には溶ける。
亜塩素酸塩類
亜塩素酸 (HCIO2) のHを金属などで置換した化合物。
物質名 | 形状 | 比重 | 潮解性 | 溶ける | 溶けない |
亜塩素酸K | 白・結晶 | 2.5 | 水 グリセロール | アルコール (ほ不溶) ケトン | |
亜塩素酸Na | 白・結晶 | 2.5 | ○ | 水 | |
亜塩素酸銅 亜塩素酸鉛 | 白・結晶 | 2.5 |
① 亜塩素酸ナトリウム
1)直射日光や紫外線で徐々に分解する。
2) 吸湿性がある。
臭素酸塩類素酸
(HBrOs) のHを金属などで置換した化合物
① 臭素酸カリウム:アルコールには溶けにくい。
硝酸塩類硝酸
(HNO 3 )のHを金属などで置換した化合物
物質名 | 形状 | 比重 | 潮解性 | 溶ける | 溶けない |
硝酸K | 無・結晶 | 2.11 | 水 アルコール グリセロール | 無水アルコール (純粋エタノール) | |
硝酸Na | 無・結晶 | 2.25 | ○ | 水 アルコール | |
硝酸アンモニウム | 無・結晶 | 1.73 | ○ | 水(激しく吸熱) アルコール エタノール |
① 硝酸カリウム:黒色火薬の原料である。
②硝酸アンモニウム (別名: 硝安)
1) 吸湿性 潮解性がある。
2) 単独でも急激な加熱や衝撃により分解し爆発することがある。
3) 水に溶ける際, 激しく吸熱する。
4) エタノールに溶ける。
ヨウ素酸塩類
ヨウ素酸 (HIO)のHを金属などで置換した化合物。
物質名 | 形状 | 比重 | 潮解性 | 溶ける | 溶けない |
ヨウ素酸K | 白・結晶粉 | 3.9 | 水 | アルコール エタノール | |
ヨウ素酸Na | 無・結晶 | 4.3 | ○ | 水 アセトン | アルコール エタノール |
ヨウ素酸Ca ヨウ素酸亜鉛 |
① ヨウ素酸カリウム:エタノールには溶けない。
②ヨウ素酸ナトリウム:エタノールには溶けない。
過マンガン酸塩類
過マンガン酸 (HMnO) のHを金属などで置換した化合物。
物質名 | 形状 | 比重 | 潮解性 | 溶ける | 溶けない |
過マンガン酸K | 黒紫 赤紫・結晶 | 2.7 | 水 アルコール | ||
過マンガン酸Na 過マンガン酸アンモニウム |
① 過マンガン酸カリウム
1) 黒紫または赤紫色の結晶。
2) 硫酸を加えると爆発する。
3) 過酸化水素と混合すると、 本来は酸化剤である過酸化水素が還元剤として働く 過酸化水素より過マンガン酸カリウムの方が酸化力が強ため)。
重クロム酸塩類
重クロム酸(H2Cr:0;) のHを金属などで置換した化合物。
物質名 | 形状 | 比重 | 潮解性 | 溶ける | 溶けない |
重クロム酸K | 橙赤・結晶 | 2.69 | 水 | アルコール エタノール | |
重クロム酸アンモニウム | 橙赤・結晶 | 2.15 | 水 アルコール エタノール |
① 重クロム酸アンモニウム
1) エタノールによく溶ける。
2) 加熱すると, 窒素を発生する。
その他のもので政令で定めるもの
物質名 | 形状 | 比重 | 潮解性 | 溶ける | 溶けない |
三酸化クロム | 暗赤・針状結晶 | 2.7 | 水 アルコール エタノール アセトン エーテル 硫酸、塩酸 | ||
二酸化鉛 | 暗褐 茶・結晶粉 | 9.38 | 水 アルコール エタノール | 水 アルコール エタノール | |
亜硝酸Na | 極薄黄・結晶粉 | 水 メタノール | エタノール | ||
次亜塩素酸Ca | 白・粉 | ○ | 水 | アルコール |
① 三酸化クロム
1) 暗赤色の針状結晶。
2) アルコール, エーテルに溶ける。
3) アルコール, エーテル、アセトンなどと接触すると、爆発的に発火する (下線部⇒徐々にではない!)。
4) 酸化性が強く、 非常に毒性が強く, 皮膚をおかす。
5) 潮解性がある。
② 二酸化鉛
1) 暗褐色の粉末できわめて毒性が強い。
2) エタノールには溶けない。
3) 日光が当たると, 分解して酸素を発生する。
4) 電気の良導体である。
③ 次亜塩素酸カルシウム
1) 吸湿性がある。
2) 水と反応して塩化水素を発生する。
3) 空気中では,次亜塩素酸を遊離するので、強い塩素臭がある。
4 光や熱により急激に分解し、酸素を発生する。
5) 高度さらし粉は次亜塩素酸カルシウムを主成分とする酸化性物質で、可燃物との混合により発火や爆発する危険性がある。
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