目次
- 1 第5類に共通する特性の重要ポイント
- 2 第5類に共通する特性のまとめ
- 3 第5類危険物に属する各物質の重要ポイント
- 3.1 有機過酸化物
- 3.2 過酸化ベンゾイル(有機過酸化物)
- 3.3 エチルメチルケトンパーオキサイド(有機過酸化物)
- 3.4 過酢酸(有機過酸化物)
- 3.5 硝酸エステル類
- 3.6 硝酸エチル(硝酸エステル類)
- 3.7 硝酸メチル(硝酸エステル類)
- 3.8 ニトログリセリン (ニトロ化合物ではない!)(硝酸エステル類)
- 3.9 ニトロセルロース (ニトロ化合物ではない!)(硝酸エステル類)
- 3.10 ニトロ化合物
- 3.11 ピクリン酸 (化学式 [C6H2 (NO 3 ) 2 OH] )(ニトロ化合物)
- 3.12 トリニトロトルエン(ニトロ化合物)
- 3.13 その他
- 3.14 ジニトロソペンタメチレンテトラミン(その他)
- 3.15 ジアゾジニトロフェノール(その他)
- 3.16 硫酸ヒドラジン(その他)
- 3.17 ヒドロキシルアミン(その他)
- 4 硫酸ヒドロキシルアミン(その他)
- 5 第5類危険物の総まとめ
第5類に共通する特性の重要ポイント
共通する性状
- 可燃性の固体または液体である。
- 水より重い (比重が1より大きい。)
- 分子内に酸素を含有している自己反応性物質である(⇒可燃物と酸素 供給源が共有している)。
(*アジ化ナトリウムなどは酸素を含まない)。 - 燃焼速度がきわめて速い。
- 加熱衝撃または摩擦等により、発火, 爆発することがある。
- 自然発火を起こすことがある (ニトロセルロースなど)。
- 引火性を有するものがある (硝酸エチルなど)。
- 水とは反応しない。
- 金属と反応して, 爆発性の金属塩を生じるものがある。
貯蔵および取扱い上の注意
- 火気や加熱などをさける。
- 密栓して通風のよい冷所に貯蔵する。
- 衝撃, 摩擦などをさける。
- 分解しやすい物質は,特に室温、湿気, 通風に注意する。
- 乾燥させると危険な物質があるので注意する。
消火の方法
第5類の危険物は爆発的に燃焼するため、消火は困難(特に多量の場合は、非常に困難) ですが,一般的には,水系 (大量の水や強化液消火 第5類の危険物は,爆発的に燃焼するため, 消火は非常に困難 (特に多量の剤など)の消火剤で消火します (⇒二酸化炭素, ハロゲン, 粉末は不可)。 な乾燥砂等も適応します。
(注:アジ化ナトリウムは注水厳禁で, 乾燥砂等を用いて消火します。)
第5類に共通する特性のまとめ
共通する性状 | 可燃性の固体または液体で、比重が1より大きい自己反応性物質 性状 で、水とは反応せず、加熱衝撃または摩擦等により、発火、爆 発することがある。 |
貯蔵、取扱い方法 | 火気,衝撃, 摩擦等を避け、密栓して換気のよい冷所に貯蔵する。 |
消化方法 | 適応する消火剤 ・水系の消火剤 (水, 強化液,泡) ・乾燥砂など 適応しない消火剤 ・二酸化炭素消火剤消方法 ・ハロゲン化物消火剤 ・粉末消火剤 <例外>アジ化ナトリウムは水系厳禁 (注水厳禁!) |
第5類危険物に属する各物質の重要ポイント
<第5類に共通する貯蔵, 取扱い法>
・火気、衝撃、摩擦等を避け、密栓して換気のよい冷所に貯蔵する。
<第5類に共通する消火方法 >
・大量注水で消火
有機過酸化物
分子中に酸素・酸素結合 (-0-0-) を有する化合物
品名 | 物質名 | 形状 | 比重 | 引火点 | 水溶性 | アルコール | 消火 |
有機過酸化物 | 過酸化ベンゾイル | 白・結晶 | 1.33 | ☓ | 溶ける | 水 | |
エチルメチルケトンパーオキサイド | 無・液体 | 1.12 | 72℃ | 溶ける | |||
過酢酸 | 無・液体 | 1.15 | 41℃ | ○ | 溶ける |
過酸化ベンゾイル(有機過酸化物)
性状
- 白色または無色の結晶 (固体)である。
- 水には溶けないが, 有機溶媒には溶けやすい。
- 強力な酸化作用がある。
- 日光,加熱, 衝撃, 摩擦等によって分解される。
- 強酸 濃硫酸や硝酸など)や有機物およびアミン類と接触すると、分解して爆発するおそれがある。
- 乾燥させると危険性が増す (⇒乾燥させない!)。
貯蔵, 取扱い法
湿らせるなどして乾燥させない! (自然発火、爆発するため)。
エチルメチルケトンパーオキサイド(有機過酸化物)
性状
- 無色透明の液体である。
- 引火性がある (引火点72℃)。
- 水には溶けないが, ジエチルエーテルには溶ける。
- 日光のほか, 鉄, ぼろ布, アルカリ等と接触しても分解が促進される。
- 市販品はジメチルフタレートなどの希釈剤で50~60%に希釈されている。
貯蔵、取扱い法
容器は密栓せず通気性を持たせる。
過酢酸(有機過酸化物)
性状
- 無色透明の液体で水やアルコール, エーテルによく溶ける。
- 引火性がある (引火点41℃)。
- 有毒で強い刺激臭の強酸化剤
- 有機物などの還元性物質と接触すると爆発するおそれがある。
- アルコール, エーテルに溶ける。
- アルミニウムなど多くの金属を侵す。
硝酸エステル類
硝酸の水素原子をアルキル基で置換した化合物
品名 | 物質名 | 形状 | 比重 | 引火点 | 水溶性 | アルコール | 消火 |
硝酸エステル類 | 硝酸エチル | 無・液体 | 1.11 | 10℃ | △ | 溶ける | 困難 |
硝酸メチル | 無・液体 | 1.22 | 15℃ | ☓ | 溶ける | ||
ニトログリセリン | 無・液体 | 1.6 | △ | 溶ける | |||
ニトロセルロース | 無・固体 | 1.7 | ☓ | 水 |
硝酸エチル(硝酸エステル類)
性状
- 無色透明の液体である。
- 引火性がある(引火点10℃→常温以下)
- 水より重く、水に少し溶ける。
- アルコール, エーテルには溶ける。
消火方法
消火は困難
硝酸メチル(硝酸エステル類)
性状
硝酸エチルと同じだが, 引火点は15℃で 水には溶けない。
ニトログリセリン (ニトロ化合物ではない!)(硝酸エステル類)
性状
- 無色の油状液体である。
- 水に溶けないが, 有機溶剤には溶ける。
- 加熱, 衝撃および凍結などによって爆発する危険性がある。
- 漏出した場合は, 水酸化ナトリウム (カセイソーダ)のアルコール溶液で拭き取る (分解して非爆発性になる)
消火方法
消火は困難
ニトロセルロース (ニトロ化合物ではない!)(硝酸エステル類)
性状
- 無色 (または白色) 無臭の綿状の固体である。
- 水に溶けないが, 有機溶剤には溶ける。
- 窒素含有量 (硝化度という) が多いほど爆発する危険性が大きくなり、 窒素含有量の多いものを強綿薬 (強硝化綿), 少ないものを弱綿薬 (弱硝 化綿)という。
- 加熱, 衝撃および日光などによって分解し, 自然発火することがある。
ニトロ化合物
有機化合物の水素をニトロ基に置き換えた化合物
品名 | 物質名 | 形状 | 比重 | 引火点 | 水溶性 | アルコール | 消火 |
ニトロ化合物 | ピクリン酸 | 黄・結晶 | 1.77 | 207℃ | ○ | 溶ける | 水 |
トリニトロトルエン | 黄・結晶 | 1.65 | ☓ | 溶ける | 困難 |
ピクリン酸 (化学式 [C6H2 (NO 3 ) 2 OH] )(ニトロ化合物)
性状
- 黄色の結晶である。
- 引火性がある (引火点207℃)。
- 水には溶けないが、熱湯やアルコール, ジエチルエーテルなどに溶ける。
- 金属と反応して爆発性の金属塩となる。
- 急激な加熱や衝撃、摩擦等により、発火、爆発の危険性がある
- 乾燥すると, 危険性が増加する ( 乾燥状態で貯蔵 取扱わない)。
- 大量注水で消火
貯蔵、 取扱い法
- 金属や酸化されやすい物質 (硫黄など) との接触をさける。
- 乾燥させた状態で貯蔵, 取扱わない (⇒湿らせて貯蔵)
トリニトロトルエン(ニトロ化合物)
性状
- 淡黄色の結晶である。
- 金属とは反応しない(この点がピクリン酸と大きく異なる)。
- 衝撃、摩擦等により、発火、爆発の危険性がある。
その他
ジニトロソペンタメチレンテトラミン(その他)
品名 | 物質名 | 形状 | 比重 | 引火点 | 水溶性 | アルコール | 消火 |
ニトロソ化合物 | ジニトロソペンタメチレンテトラミン | 淡黄・粉 | △ | △ | 水 |
性状
- 淡黄色の粉末である。
- 水, ベンゼン, アルコールおよびアセトンなどにわずかに溶ける。
- 加熱すると分解して窒素を生じる。
- 強酸に接触すると, 爆発的に分解し、 発火する危険性がある。
ジアゾジニトロフェノール(その他)
品名 | 物質名 | 形状 | 比重 | 引火点 | 水溶性 | アルコール | 消火 |
ジアゾ化合物 | ジアゾジニトロフェノール | 黄・粉 | 1.63 | △ | 溶ける | 困難 | |
アゾ化合物 | アゾビスイソブチロニトリル | 白・粉 | ☓ | 溶ける | 水 |
性状
- 黄色の不定形粉末である。
- 水にはほとんど溶けないが, アセトンなどには溶ける。
- 光に当たると褐色に変色する。
- 燃焼現象は爆ごう* を起こしやすい。
(*爆ごう: 爆発の際に火炎が音速を超える速さで伝わる現象)
消火方法
一般に消火は困難
硫酸ヒドラジン(その他)
品名 | 物質名 | 形状 | 比重 | 引火点 | 水溶性 | アルコール | 消火 |
ヒドラジンの誘導体 | 硫酸ヒドラジン | 白・結晶 | 1.37 | 温水○ | 水 |
性状
- 白色の結晶である。
- 冷水には溶けないが、 温水には溶ける。
- 還元性が強く, 酸化剤とは激しく反応する。
- 水溶液は酸性を示す。
貯蔵, 取扱い法
直射日光をさけ, 酸化剤やアルカリと接触させない。
ヒドロキシルアミン(その他)
品名 | 物質名 | 形状 | 比重 | 引火点 | 水溶性 | アルコール | 消火 |
ヒドロキシルアミン | ヒドロキシルアミン | 白・結晶 | 1.20 | ○ | 溶ける | 水 |
性状
- 白色の結晶である。
- 水, アルコールに溶ける。
- 潮解性がある。
- 裸火や高温体と接触するほか, 紫外線によっても爆発する危険性がある
硫酸ヒドロキシルアミン(その他)
品名 | 物質名 | 形状 | 比重 | 引火点 | 水溶性 | アルコール | 消火 |
ヒドロキシルアミン塩類 | 硫酸ヒドロキシルアミン | 白・結晶 | 1.90 | ○ | 水 | ||
塩酸ヒドロキシルアミン | 白・結晶 | 1.67 | ○ | △ |
性状
- 白色の結晶である。
- 水やメタノールに溶けるが,エタノールには溶けない。
- 水溶液は強い酸性を示し, 金属を腐食させる。
- 強い還元剤である。
- アルカリ存在下では爆発的に分解する。
貯蔵, 取扱い法
乾燥状態を保ち, 水溶液は鉄製容器に貯蔵せず (腐食するので), ガラス製容器などに貯蔵する (クラフト紙に入って流通することもある)。
アジ化ナトリウム(その他)
品名 | 物質名 | 形状 | 比重 | 引火点 | 水溶性 | アルコール | 消火 |
その他政令で定めるもの | アジ化ナトリウム | 無・結晶 | 1.85 | ○ | 砂 | ||
硝酸グアニジン | 白・結晶 | 1.44 | ○ | 溶ける | 水 |
性状
- 無色の板状結晶である。
- 水に溶けるがエタノールには溶けにくく、エーテルには溶けない。
- 加熱により窒素を発生し, 金属ナトリウムを生じる。舗の色白
- 酸と接触してアジ化水素酸を発生し, 水があると爆発性のアジ化物を生じる。
- 銀、銅、鉛、水銀, 二硫化炭素と反応して衝撃に敏感な化合物を生成する
- 二硫化炭素や臭素には激しく反応する。
貯蔵、取扱い法
直射日光をさけ、酸や金属粉 (特に重金属)と接触させない。
消火方法
乾燥砂等で消火し 注水は厳禁である (3の金属ナトリウムが第3類の禁 水性物質のため)。
硝酸グアニジン(その他)
性状
- 無色または白色の結晶である。
- 有毒である。
- 水, アルコールに溶ける。
第5類危険物の総まとめ
- 比重は1より大きい。
- 自己燃焼しやすい(自身に酸素を含んでいるので)。
- 水溶性
水に溶けないものが多い (ピクリン酸, 過酢酸, アジ化ナトリウム、硝酸グ アニジンなどは水に溶け (硝酸エチルは少溶), 硫酸ヒドラジンは温水に溶ける。 - 色
ほとんど無色(または白色) であるが、ニトロ化合物(ピクリン酸 トリニ トロトルエン)、ニトロソ化合物 (ジニトロペンタメチレンテトラミン) ジア ゾ化合物 (ジアゾジニトロフェノール) は黄色か淡黄色。 - 形状
固体のものが多いが,次のものは液体である。
メチルエチルケトンパーオキサイド, 過酢酸、硝酸エチル、硝酸メチル、ニ トログリセリン - ほとんどのものは有機化合物である (アジ化ナトリウム、硫酸ヒドラジ ン、硫酸ヒドロキシルアミンなどは無機化合物)。
- 引火性があるもの
硝酸エチル、硝酸メチル、過酢酸, メチルエチルケトンパーオキサイド, ビ クリン酸 (硝酸エチル、硝酸メチルの引火点は常温より低いので注意!) - 自然発火性を有するもの
過酸化ベンゾイル、ニトロセルロース。 - 強い酸化作用があるもの。
過酸化ベンゾイル, メチルエチルケトンパーオキサイド,過酢酸、硝酸グアニジン。 - 燃焼速度が速く、 消火が困難である。
- 消火の際は,一般的には水や泡消火剤を用いるが,アジ化ナトリウムに は注水厳禁である。
- メチルエチルケトンパーオーキサイドの容器は通気性をもたせる(その 他の危険物は密封する)。
- 乾燥させると危険なもの (湿らせた状態で貯蔵するもの)
過酸化ベンゾイル, ピクリン酸, ニトロセル