目次
第3類に共通する特性の重要ポイント
共通する性状
- 常温 (20℃)では、液体または固体である。
- 物質そのものは、可燃性のものと不燃性のものがある (リン化カルシウ ム, 炭化カルシウム, 炭化アルミニウムのみ不燃性)
- 一部の危険物 (リチウムは禁水性, 黄リンは自然発火性) を除き, 自然 発火性と禁水性の両方の危険性がある。
リチウム禁水性のみ黄リン⇒自然発火性のみ(その他の第3類⇒自然発火性+禁水性)4. 多くは, 金属または金属を含む化合物である。
貯蔵および取扱い上の注意
- 自然発火性物質は、 空気との接触はもちろん, 炎, 火花, 高温体との接 触および加熱をさける。
- 禁水性物質は, 水との接触をさける。
- 容器は湿気をさけて密栓し, 換気のよい冷所に貯蔵する。
- 容器の破損や腐食に注意する。
- 保護液に貯蔵するものは,保護液から危険物が露出しないよう,保護液 の減少に注意する。
- 黄リンその他水中に貯蔵する物品と禁水性物品とは、同一の貯蔵所にお いて貯蔵しないこと
(危政令第26条より)黄リンと禁水性物品とは同時貯蔵できない。
消火の方法
- 水系の消火剤 水泡 強化液) は使用できない (黄リンのみ注水消火可能)。
また, 二酸化炭素消火剤, ハロゲン化物消火剤は全ての第3類危険物に適応しない。 - 禁水性物質(=黄リン以外の物質) は,炭酸水素塩類の粉末消火剤を用いて消火する(黄リンは×)。
- 乾燥砂(膨張る石、膨張真珠岩含む)は、すべての第3類危険物に使用することができる。
第3類に共通する特性のまとめ
共通する性状 | 液体または固体で,一般には自然発火性と禁水性の両方の危険性 があるが,リチウムは禁水性, 黄リンは自然発火性のみである。 |
貯蔵、取扱い方法 | 火と水を避け (空気は物質により避ける必要がある)、密栓して 扱い方法 冷所に貯蔵する。 |
消化方法 | ①黄リン以外 適応する消火剤 ・粉末消火剤(炭酸水素塩類) ・乾燥砂など (膨張ひる石, 膨張真珠岩含む) 適応しない消火剤 ・水系の消火剤(強化液、泡含む) ・二酸化炭素消火剤 ・ハロゲン化物消火剤 ②黄リン 適応する消火剤 ・水系の消火剤 (強化液, 泡含む) ・乾燥砂など (膨張ひる石,・ハロゲン化物消火剤膨張真珠岩含む) 適応しない消火剤 ・二酸化炭素消火剤消方法 ・ハロゲン化物消火剤 |
第3類危険物に属する各物質の 重要ポイント
カリウム・ナトリウム
物質名 | 形状 | 比重 | 自然 発火性 | 禁水性 | 保護液 | 消火 |
カリウム | 銀白 金属 | 0.86 | ○ | ○ | 灯油 | 砂・金属 |
ナトリウム | 銀白 金属 | 0.97 | ○ | ○ | 灯油 |
性状
- 水より軽い (比重はカリウムが0.86. ナトリウムが 0.97)。
- 水やアルコールと反応して発熱し、 水素を発生して発火する。
- ハロゲン (塩素など) とも激しく反応する。
- 化学的反応性や水分と接触した際の反応熱は、カリウムの方が大きい。
- 炎色反応は、カリウムは紫色, ナトリウムは黄色
- 有機物に対して還元作用があり、 よりカリウムの方が強い。
- ナトリウムは,酸, 二酸化炭素と激しく反応して発火、爆発する危険性がある。
貯蔵, 取扱い法
灯油、軽油など (流動パラフィン, ヘキサン)の保護液中で貯蔵する
(エ タノール、メタノール中には貯蔵しない⇒性状の2より反応するため)。
消火方法
- 注水厳禁。 また, ハロゲン化物, 二酸化炭素, 泡, 強化液も厳禁
- 乾燥砂等、金属火災用粉末消火剤, 炭酸ナトリウム (ソーダ灰), 石灰等 で消火する。
アルキルアルミニウム(固体と液体がある)
品名 | 物質名 | 形状 | 自然 発火性 | 禁水性 | 保護液 | 消火 |
アルキルアルミニウム | トリエチルアルミニウム | 無・液体/固体 | ○ | ○ | 不活性ガス | 粉・砂 |
性状
- 水とは爆発的に反応して発火, 爆発するおそれがあり また、空気とも「接触するだけで急激に酸化されて発火する危険性がある。
- 水や空気との反応性は,アルキル基の炭素数またはハロゲン数が多いものほど小さい(⇒危険性が小さくなる)。
- アルコールやアミン類と激しく反応するほか, ハロゲン化物とも激しく反応し、有毒ガスを発生する。
- ベンゼンやヘキサンなどで希釈すると,危険性が低くなる(ベンゼン やヘキサンと接触や混合しても発熱反応が起きない)。
貯蔵, 取扱い法
- 安全弁などを設けた耐圧性の容器に不活性ガス (窒素やアルゴンなど) を注入し、完全に密閉して冷暗所に貯蔵する。
- 貯蔵等の際にベンゼンやヘキサンなどで希釈すると危険性が軽減される。
消火方法
- 注水厳禁。また,ハロゲン化物も厳禁で,リン酸塩類を使用する粉末消火 剤も不適。
- 消火は困難であり、周囲に延焼しないよう 乾燥砂等に吸収させて火勢を 弱らせる。
ただし, 火勢が小さい場合は、炭酸水素ナトリウム等を使用す る粉末消火剤での消火は可能。
ノルマルブチルリチウム
品名 | 物質名 | 形状 | 比重 | 自然 発火性 | 禁水性 | 保護液 | 消火 |
アルキルリチウム | ノルマルブチルリチウム | 黄褐・液体 | 0.84 | ○ | ○ | 不活性ガス | 粉・砂 |
性状
黄褐色の液体であること, 酸素や二酸化炭素とも反応する以外は,アルキルアルミニウムに準じる。
リチウム
品名 | 物質名 | 形状 | 比重 | 自然 発火性 | 禁水性 | 保護液 | 消火 |
アルカリ金属及びアルカリ土類金属 | リチウム | 銀白・金属 | 0.53 | ☓ | ○ | 灯油 | 砂 |
性状
- 固体金属中で最も軽く、 比熱が最も大きい。
- 水と反応して水素を発生する (高温ほど激しい)。
- ハロゲンと激しく反応し、ハロゲン化物を生じる。
- 燃焼すると, 深赤色の炎を出し、酸化リチウム (有害)を生じる。
貯蔵、 取扱い法 (注:バリウムも同じ)
灯油中(または流動パラフィン中) に貯蔵する。
消火方法(注: バリウムも同じ)
- 注水厳禁
- 乾燥砂等で消火する。
カルシウム
品名 | 物質名 | 形状 | 比重 | 自然 発火性 | 禁水性 | 保護液 | 消火 |
アルカリ金属及びアルカリ土類金属 | カルシウム | 銀白・金属 | 1.6 | ○ | ○ | 砂 |
性状
- 強い還元性を有する。
- 水や酸と反応して水素を発生する (高温ほど激しい)。
- 燃焼すると、橙色の炎を出し、酸化カルシウム(生石灰)を生じる。
- 貯蔵の際は、金属製容器に入れて密栓し,冷所に貯蔵する。
貯蔵, 取扱い法
灯油中(または流動パラフィン中) に貯蔵する。
消火方法
- 注水厳禁
- 乾燥砂等で消火する。
黄リン
(⇒自然発火性のみで水とは反応しない!)
品名 | 物質名 | 形状 | 比重 | 自然 発火性 | 禁水性 | 保護液 | 消火 |
黄リン | 黄リン | 白黄・固定 | 1.82 | ○ | ☓ | 水 | 水、砂 |
性状
- 白色または淡黄色のろう状固体である。
- 水に溶けないが, ベンゼンや二硫化炭素には溶ける。
- 空気中に放置すると白煙を生じて激しく燃焼し(⇒自然発火する)+酸化四リン (五酸化ニリン) になる。
- ハロゲンとも反応する。
- 発火点は100℃より低い (34~44℃)
- 暗所では青白色の光を発する。
貯蔵、 取扱い法
- (酸化を防ぐため) 弱アルカリ性の水中で貯蔵する。
- 禁水性物品とは,同一の貯蔵所において貯蔵しないこと。
消火方法
水(噴霧注水)や土砂を用いて消火する(高圧注水は飛散するのでNG)
ジエチル亜鉛 ( 有機金属化合物)
品名 | 物質名 | 形状 | 比重 | 自然 発火性 | 禁水性 | 保護液 | 消火 |
有機金属化合物 | ジエチル亜鉛 | 無・液体 | 1.21 | ○ | ○ | 不活性ガス | 粉 |
性状
- 酸化されやすく、空気中で自然発火する。
- 水, アルコール, 酸とは激しく反応する。
- ジエチルエーテル、ベンゼンに溶ける。
貯蔵, 取扱い法
不活性ガス中で貯蔵する。
消火方法
- 注水厳禁
- 粉末消火剤で消火する。
水素化ナトリウム (金属の水素化物)
品名 | 物質名 | 形状 | 比重 | 自然 発火性 | 禁水性 | 保護液 | 消火 |
金属の水素化物 | 水素化ナトリウム | 灰・結晶/粉 | 1.4 | ○ | ○ | 不活性ガス、 流動パラフィン | 砂、消石灰、ソーダ灰 |
性状
- 灰色の結晶性粉末である(⇒粘性のある液体ではない!)。
- 水と激しく反応して水素を発生し、 自然発火するおそれがある。
- アルコール, 酸と反応する。
貯蔵、取扱い法
容器に窒素を封入するか、または、流動パラフィンや鉱油中に保管し、酸化剤や水分との接触をさける。
消火方法
- 注水厳禁
- 乾燥砂、消石灰 ソーダ灰などで消火する。
水素化リチウム
品名 | 物質名 | 形状 | 比重 | 自然 発火性 | 禁水性 | 保護液 | 消火 |
金属の水素化物 | 水素化リチウム | 白・結晶 | 0.82 | ○ | ○ | 不活性ガス、 流動パラフィン | 砂、消石灰、ソーダ灰 |
性状
比重 0.82の白色の結晶で, 性状等は水素化ナトリウムに準じる。
貯蔵、 取扱い法
容器に窒素を封入するか、または、流動パラフィンや鉱油中に保管し、酸化剤や水分との接触をさける。
消火方法
- 注水厳禁
- 乾燥砂、消石灰 ソーダ灰などで消火する。
リン化カルシウム (金属のリン化物)
品名 | 物質名 | 形状 | 比重 | 自然 発火性 | 禁水性 | 保護液 | 消火 |
金属のリン化物 | リン化カルシウム | 暗赤・固体/粉 | 2.51 | ○ | ○ | 砂 |
性状
- 赤褐色の結晶 (または結晶性粉末) または塊状の固体である。
- エタノール, エーテルに溶けない。
- 加熱,または水, 弱酸と反応して, 可燃性のリン化水素 (ホスフィン) を発生する。
消火方法
- 注水厳禁
- 乾燥砂で消火する。
炭化カルシウム (カルシウムの炭化物)
品名 | 物質名 | 形状 | 比重 | 自然 発火性 | 禁水性 | 保護液 | 消火 |
CaまたはNaの炭化物 | 炭化カルシウム | 無白・結晶 | 2.22 | ○ | ○ | 不活性ガス(必要に応じて) | 砂、粉末 |
性状
- 純品は無色だが市販品は灰色を呈しているものが多い。
- 水と反応して, 可燃性で有毒の (空気より軽い) アセチレンガスと水酸化カルシウム (消石灰) を発生する。
- 高温では還元性が強くなり, また, 窒素ガスと反応する。
- 吸湿性がある。
貯蔵 取扱い法
必要に応じて不活性ガス (窒素など) を封入する。
消火方法
- 注水厳禁
- 乾燥砂か粉末消火剤で消火する。
炭化アルミニウム
品名 | 物質名 | 形状 | 比重 | 自然 発火性 | 禁水性 | 保護液 | 消火 |
CaまたはNaの炭化物 | 炭化アルミニウム | 無黄・結晶 | 2.37 | ○ | ○ | 不活性ガス(必要に応じて) | 砂、粉末 |
性状
- 純品は無色だが市販品は黄色を呈しているものが多い。
- 自身は不燃性である。
- 高温では還元性が強くなり、多くの酸化物を還元する。
- 水と反応して、可燃性の(空気より軽い) メタンガスを発生し,水酸化アルミニウムとなる。
貯蔵, 取扱い法
必要に応じて不活性ガス (窒素など) を封入する。
消火方法
- 注水厳禁
- 乾燥砂か粉末消火剤で消火する。
トリクロロシラン
品名 | 物質名 | 形状 | 比重 | 自然 発火性 | 禁水性 | 保護液 | 消火 |
トリクロロシラン | 無・液体 | 1.34 | ○ | ○ | 砂、粉末 |
性状
- 無色で刺激臭がある。
- 水と反応して塩化水素を発生する。
- 引火点が14℃と低く、燃焼範囲も広いので (1.2~90.5 〔vol%〕) 引火の危険性が高い。
貯蔵、取扱い法
酸化剤を近づけない。
消火方法
注水厳禁乾燥砂で消火する。